007とセラピスト

オフィスのドアがノックされた。

「いまどき誰だろうな。」

ドアを開けて見るとアメリカ人そうな大きな男性が立っていた。この辺では珍しく、背広とネクタイ姿である。

My name is Bond, James Bond.

(私:何この人言ってるの、朝っぱらから。)「OK, but what can I do for you (James Bond?)?

私も冗談は好きなほうであるから、面白がってのってしまう。ところが彼曰く、彼はFBIのエージェントでアメリカの大統領暗殺の計画について調べに来たのだと言う。

(私:なるほどね、これは冗談ではなさそうだ。彼は大変な心の病気をしている。アポもなしにこのように朝っぱらからやって来たのだから、よっぽど悩んでいるのだろう。お話だけでも聞いて、何か私ができることはあるか考えてみよう。)

というわけで、とりあえず座ってもらって彼の用件を聞いてみた。そして彼は財布から名詞を取り出した。見てみると確かにJames Bondと書いてある。その下にはFBI調査員とも書いてある。上の方には、FBIのシールまではってあるではないか。

(私:まあ、ここまで徹底していると、彼はよっぽどのメガロマニアだな。)(私の無意識:これって、ひょとしたら本物?)

Bond:「あなたの患者さんにマンチューって言う人がいるでしょう。彼がホワイトハウスに電話をしたり、手紙を出したりして、大統領の命を狙おうといるのですよ。マンチューの親戚から彼がここでセラピーをしているって聞いたんでね。」

(えーっ、問題なのは彼(Bond)ではなかったのか?!)

私:「あなた、本当にジェームズボンドなの?身分証明、見せてもらっていい?どうしてこんな名前をしているの?皆、何か言うでしょう?etc., etc.」と言うように質問ばっかり出て来るし、彼も主題から離れざるを得なかった。しかしながらこのような名前では本当に仕事になるのだろうか。皆、彼の名前ばっかに興味を持って、本題を忘れてしまいそうである。

Mr. Bondは、その患者マンチューに関していろいろ調べたかったわけだが、セラピストは守秘義務があるので、たとえ国家安全にかかわる事でも話すわけにはない。(マンチューが直接私にアメリカ大統領を殺すといい、現実的な計画があればのみ、関連機関に報告する義務があるのだが。)ボンドさんにそれを伝えて、私はマンチューからの承諾を得、翌日彼とまた話した。

調査は細かいところまで及び、私の意見などを聞いて、マンチューが危険人物でないこと、そして彼には大統領殺人までできる現実性と能力がないことを確認し帰っていった。

興味の持てる出来事ではあったが、大統領の名前まで出てくると、やはりストレスを感じずにはいられない。その日は、私もジェームズボンドのように、国家安全に貢献した気分になって、帰宅してからマーティーニーを一杯の飲んだ。 “Shaken, not stirred, of course.(007がよくたのむマーティーニーの飲み方)

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