自閉症と脳
自閉症といいますと、一般的に自分の世界の中に閉じこもって他の人とやり取りをしない子供のことを考えます。実際の自閉症の子供を見ますと確かにそのような特徴を見ることができます。でも、自閉症の子の中には、話す子もいますし、遊べる子もいますし、閉じこもっているように見られない子もいるのです。
自閉症の子供にも幅がありまして、ちょっと普通と違うかなと言うくらいの子から、普通の言葉や人間関係でやり取りのできない重傷の子もいます。すなわち、自閉症といってもいろいろな症状の子がいるのですが、おおざっぱに一つのグループとして囲んでいるだけなのです。実際にはいろいろな違った問題の子がいると考えられ、にもかかわらず、ある範囲内での症状を出しているので、その全体を自閉症と呼んでいるだけなのです。
では、専門的にはどのような症状を自閉症としてよんでいるのでしょう。自閉症は、主に三つの分野での問題をいいます。一つは、言葉やコミューニケーションの遅れ。すでに言葉を話せる年になっても言葉がでなかったり、たとえ言葉を知っていても、他の人とやり取りをうまくできないことをいいます。
もう一つは、人間関係の異常なところ。人を見なかったり無関心であったりし、また、一緒に遊んだり人を好きになったりしません。他の人の心が解らなかったりもします。
そして最後に、行動に異常が見られます。一つのことを何度も繰り返してみたり、おもちゃで遊んでも、遊び方が普通と違っていたりします。おもちゃの形に注目しておもちゃの目的を無視したりします。また、おもちゃで遊ばないで、代わりにおもちゃを並べたりもします。
いったいこのような症状はどうして起こるのでしょう。自閉症の研究が深まるにしたがって、その症状が子供の脳の発達と関係があることが解りつつあります。普通子供の脳神経は母のお腹の中でどんどん成長し、生まれてからも発達し続けます。脳の成長は3才位までにほとんど完成されますが、それからも発達が続き、10代の半ば位まで成長します。
脳の成長にしたがって子供はいろいろなことをできるようになります。赤ちゃんはまだ周辺の物が解りません。物が私達の見るように見えなかったり、聞こえたりしないのです。代わりに、物の形や色などの部分が見えたり、言葉の意味ではなく音が聞こえたりします。
そのうちに、物体を理解したり、人を見ることができたりします。ただの音だったのが意味がついてきて言葉になったりします。続けて脳の成長に伴いながら、物と物の関係や人間関係や言葉の関係を理解して文の意味を掴むことができるようになります。
でも、あるところで脳の発達が遅れてしまったりしたらどうなるでしょう。人間関係を理解することができなかったり、言葉を言葉として聞くことができなかったり、おもちゃの車を車として見えなかったりするでしょう。ですから、人間関係に興味をもてなかったり、言葉を理解できなかったり、おもちゃをそれらしく遊ばなくなったりするでしょう。この状態を自閉症と呼ぶわけです。
自閉症と治療
では、自閉症の子供をどのように援助していけばよいのでしょう。
自閉症の子供はいろいろな面から援助が必要です。言葉の遅れはスピーチセラピーが必要な時がありますし、社会性を促すために個人的指導やグループトレーニングなどが要な時があります。知能を伸ばすためにスペシャルエジュケーションspecial educationの援助を必要とするときもあるでしょう。すなわち、自閉症だからといって決まったやり方があるわけではなく、その子の問題に応じて最適な介入をしていきます。
ここでは、私のプレイルームでの自閉症もしくは発達障害をもつ子供の接し方を述べてみたいと思います。
子供、特に自閉症のある子は、大人のように言葉で気持ちや考えを伝えられません。子供の自然の表現は、遊びを通して行われます。ですから、子供を遊び場に置き、子供が自然に遊びだすのを観察しながら、タイミングを見計らって適当な介入をしていきます。
自閉症の子供で一番大切なのはその子の社会性を育てることだと思います。これなしでは、親子の関係、他の大人と子供の関係、そして、子供同士の遊びができません。人間関係が持てませんと、大切な教えを伝えることができません。
社会性を発達させるために、声をかけたり、触ってみたり、おもちゃを差し出したりいろいろな刺激をしていきます。子供の人間関係的な反応を増やし、徐々に関係を発達させます。その中で、感情のやり取りは大切です。大人は気持ちを表し、子供の少しもの感情の表現に反応をしていきます。ある程度人間関係の中で遊べるようになりますと、規則や協力を教えていきます。よい結果が出たときには、子供が大人と協力し合いながらお互いに楽しめる遊びをするようになります。
次に言語トレーニングですが、子供を机の前に座らせて、単語を教えようとしてもあまりよい効果は得られません。子供としては興味がないことですし、大人が何をしようとしているのかも解らないでしょう。
その代わりに、子供の自然の遊びの中に言葉を入れていきます。最初は擬声語を教えます。音が単純で子供には聞きやすいからです。たとえば、車は「ブーブー」、滑り台でしたら「スー」といった感じです。このようにして言葉の基本的な音声を教えます。それができるようになったところで、短い単語を教え、徐々に文を作っていきます。文法の発達の遅れのある子には、文全体を一つの単語として教えるのも有効な方法です。
最後に知能の発達ですが、前例と同じく遊びを通して思考力の力をつけていきます。子供は遊びを通して気持ちを表現しますが、その遊びの複雑さは知能の表現になるわけです。子供の遊びに加わり、適当なガイドによって遊び方を複雑化していきます。ただ車を押すのではなく、どこからどこへ行くようにします。そしてただ行くのではなく、誰かさんと行くようにします。これをおもちゃを使って導いていきます。
このような方法によって自閉症や発達障害のある子を援助していけますが、大切なことは、一人一人その子の発達レベルとペースがあって、それにあわせて根気よく教えていかなければならないということです。