映画と逃避

 私も映画は嫌いではありませんから、たまに面白そうなのがありますとみに行
 
ったりします。特に面白い映画などになりますと、時と場所を忘れて夢中になり

ます。みている間は、まさに登場人物で作られた架空の現実の中に入り込み、そ

れ以前にあった自分の現実を忘れてしまいます。俳優さん達もその映画内での現

実を作り上げるために苦心したのでしょう。彼らも自分たちの現実を一時的に中

止し、映画の現実に入り込んだのでしょう。その現実に私たちは吸い込まれてい

きます。 たとえ一時的でもそれまでにあった自分の現実を忘れることは、スト

レス発散になるようです。毎日の生活に含まれている難しさから2時間ほどでは

ありますが、解放される。それは新鮮な感じがしないでもありません。 

 心理的障害の一つにフューグ (Fugue) という状態あります。これはある人が
 
急に普段自分のいる環境から逃げ出し、どこか他の地に現れることです。そして、

その間以前の自分の過去を忘れてしまいます。たまには自分が誰であったかも忘

れてしまうこともあります。このような状態は、遅かれ早かれ気がついて終わり

ますが、今度は終わった後、フューグの間にどこにいたか忘れてしまうこともあ

ります。

 このようなことはもちろんストレスを多く感じている人に起こるわけですが、
 
私たちの身近な映画の例からもわかるように、現実からの逃避というものが、根

底にあると思います。大変な現実である環境から一時的に離れ、知らない土地に

自分を見つけます。その間、過去の自分の記憶がありません。ストレス解消には

もってこいの状態であると思われます。その上、普段の自分の環境に戻ったとき、

逃避の世界のことは忘れているとは、まさに、都合がよいと思います。

 このような言い方をしますと、私がこの状態におちいった人の非難をしている
 
かのようですが、決してそうではありません。ただ、精神的に困った人が必死に

ストレスと戦っている姿が見えると思います。また、私たちの意識していないと

ころで、無意識の力が働き、自分を守っているのが見えると思います。まさに心

の力ってすごいですね。

 ところで、フューグ状態の時、一番人が好んで行くところがあります。それは、
 
なんとラスベガスなんだそうです。なんとなく、わかるような気がしませんか。
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