刺激剤と脳

刺激剤とは、コカインとか覚醒剤などの例で知られている脳を刺激する作用があるドラッグ(麻薬)です。最近の研究によりますと、刺激剤の使用は判断力と融通性の低下、そして衝動性が増えセルフコントロールの低下に繋がると言うことです。これは主に刺激剤の長期の使用が、大脳の眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ、: Orbitofrontal cortex )に与える結果です。眼窩前頭皮質は脳の先端に位置し、眼球に近い部分の場所です。この部分が人間に大切な実行機能を働かせ、人が回りの環境に適応するのを助けていきます。

判断力は、日ごろの生活の中で起きるいろいろな問題解決に必要です。問題に関して適切な理解をし、それに基づいて決断をしていきます。刺激剤の悪用によって、その機能に間違いが多くなったり、決断が遅くなったりします。それだけではなく、刺激剤の使用に関しての判断もますます低下し、結果としてその中毒から抜けること自体難しくなります。

融通性の低下も生活に支障をもたらします。融通性とは、回りに変化が起こったとき、それに応じて自分の行動を変えていくということです。この問題は、自分の試した行動が問題解決に至らないことに気が付かないだけではなく、気が付いても、それを変えようとしないことです。何か悪い癖を習ってしまった後、自分にとって良くないのを知っているにもかかわらず、自分に変化を求めていかない状態だといえるでしょう。もし、刺激剤の中毒になってしまったら、それが悪いのを解っていながら、それを変えられないと言うことになります。

最後に、刺激剤は眼窩前頭皮質を侵し衝動的な行動を増やしますが、これも毎日の生活や人間関係に困ることを増やすでしょう。これは、回りの状態から判断して、してはいけない行動を、考慮せずにやってしまうということです。面白いことに、最初から衝動的な性格の人が、刺激剤の中毒になりやすいということです。すなわち、衝動的に刺激剤を使い始め、中毒になってしまうと、以前よりもっと衝動的になり、ますます中毒から抜けるのが大変になっていきます。

こうして見ますと、刺激剤の中毒自体が悪いサイクルを引き起こし、止められない状態を作りだすだけでなく、その結果脳機能が衰え、生活の中でいろいろな問題に繋がっていくことになります。まさに心身ともに破壊の道をたどり始めるということになりましょうか。

ところで、ADHD はもうすでに日常語と言ってよいほど皆さんはご存知のことと思いますが、その薬物治療の一つのやり方が、子供に刺激剤を与えることです。もちろん治療用の刺激剤は、麻薬として通っているのとは違い、医師が処方して、使用はよくコントロールされています。しかしながら、その効果は同じで、脳を刺激することです。大量な薬物を使用(悪用)すれば、中毒になりますし、また脳機能に支障が出てくるのは確かです。

でも、不思議だと思いませんか。ADHD の子に処方された刺激剤をあげると、それまで衝動的な子供が落ち着くことができ、そうすることによって判断力もよくなります。勉強ももっと集中してできるようになります。同じ刺激剤でも、少量ADHD の子にあげると、よい結果になります。でも、それを大量に使用すると、一時的に本人は気持ちがよいかもしれませんが、中毒になったり、脳機能が衰えます。物事にはちょうどよい適当な使い方があるということになりますかね。

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